火災の3割、死者の7割
地震や水害と違って、火災は毎日どこかで起きています。消防庁の令和7年版消防白書によると、令和6年中の出火件数は37,141件、1日あたり102件でした。
そのうち住宅火災は11,839件。建物火災20,972件の56.5%です。件数では全体の3割ほどですが、亡くなる人の割合はまったく違います。
| 令和6年中 | 人数 |
|---|---|
| 火災による死者(放火自殺者等を含む) | 1,451人 |
| 放火自殺者等を除いた死者 | 1,228人 |
| そのうち建物火災 | 1,199人 |
| そのうち住宅火災(放火自殺者等を除く) | 1,030人 |
住宅火災で亡くなった1,030人のうち、65歳以上が779人(75.6%)。死に至った経過では、**逃げ遅れが42.2%**でもっとも多くなっています。
つまり住宅火災の問題は、「家が燃える」ことより先に、気づくのが遅れて逃げられないことにあります。
出火原因の上位
令和6年中の全火災の出火原因です。
| 順位 | 原因 | 件数 |
|---|---|---|
| 1 | たばこ | 3,058件(全火災の8.2%) |
| 2 | たき火 | 2,781件 |
| 3 | こんろ | 2,718件(全火災の7.3%) |
出火件数37,141件のうち、**失火による火災が75.4%**を占めます。たばこの火災の6割以上は「不適当なところに置く」(1,903件)が原因でした。置き忘れと消し忘れです。
増えているのは電気器具の火災
消防庁は、秋季全国火災予防運動の資料で「住宅における電気器具類を発火源とする火災件数が増加している」としています。挙げられている出火の形は、どれも家の中にあるものです。
コンセントとコード
- トラッキング現象 — プラグを長期間差したままにすると、ほこりと湿気で火花放電をくり返し、やがて発火します。
- たこ足配線 — タップの定格電流を上回る電流が流れて発熱します。
- 束ねたまま使う — 束ねた部分に熱がこもります。
- 差し込み不足 — 完全に差さっていないと電気抵抗が増し、プラグが加熱されます。
- 折れ曲がり・踏みつけ — 内部の配線が部分的に断線し、その部分が発熱します。
家電
- 電子レンジで加熱しすぎると、水分が蒸発して炭化し発火します。レンジで焼き芋を作るような調理は、その危険があります。
- アルミなど金属が使われた容器や袋をレンジで加熱すると、スパークして発火することがあります。
- レンジ内の油汚れを放置すると、炭化して急に発火することがあります。
- エアコンの清掃中に洗浄液が電気配線にかかったまま動かすと、ショートして発火することがあります。
充電式電池(リチウムイオン電池)
- 暖房機器の近くに置いて温めると、内部に熱がこもって発火することがあります。
- 水に落としたことで発火した例があります。
- 捨てるときに絶縁テープなどで絶縁処理をしないと、電池同士が接触して放電し、発火することがあります。
コンセントのほこりを取り、使っていないプラグを抜く。これだけで防げる火災があります。
住宅用火災警報器 — 設置率84.9%、条例に適合するのは65.8%
住宅用火災警報器は、平成23年6月までにすべての住宅で設置が義務になりました。消防庁の調査(令和7年6月1日時点)では、全国の設置率は84.9%、市町村の条例が定める場所すべてに付いている「条例適合率」は**65.8%**です。
効果ははっきりしています。消防庁によると、令和2年から令和5年までの4年間で、警報器が設置されていた場合は設置されていなかった場合に比べ、死者数と損害額は半減、焼損床面積は約6割減でした。
問題は、付けたあとです。同じ調査で、作動確認をした世帯の約3.5%で電池切れや故障が見つかり、**設置から10年を経過した警報器が約32.2%**ありました。
- 1か月に1回、本体から下がっているひもを引くか、ボタンを押して作動試験をする。
- ほこりや小さな虫は誤作動の原因になるので取り除く。年に一度、中性洗剤を薄めた液に浸して固く絞った布で軽く拭く。
- 設置から10年を目安に本体を交換する。 電池だけ替えても、内部の電子部品が劣化しています。
- 捨てるときは本体から電池を外し、地域のルールに従う。
選び方と付ける位置は住宅用火災警報器の選び方にまとめています。
消すか、逃げるか
警報器が鳴った段階では、どこでどのくらいの火災が起きているのかわかりません。消防庁の住宅防火読本は、判断の基準をこう示しています。
| 消してよい | 逃げる |
|---|---|
| 火元が確認できる(視界がきく) | 火元が確認できない(煙が充満して視界がきかない) |
| 炎が天井や自分の背丈よりも小さい | 炎が天井に届いている、自分の背丈よりも大きい |
消火をやめて逃げる合図は3つです。消火器の薬剤がなくなった。炎が天井まで届いてしまった。消火できなかった。
消火するときは、先に避難する方向と経路を確認してから、火元を狙って放射します。入口を背にする、という意味です。
煙は高いところからたまり、量が増えると床の近くまで下がってきます。逃げるときはタオルやハンカチで鼻と口を覆い、姿勢を低くして進みます。
置き場所と使い方は住宅用消火器の選び方にまとめています。
知らせる、通報する
- 「火事だー」と大声で叫ぶ。 家族に知らせ、隣近所にも知らせて、通報や消火の協力を頼みます。
- 119番。 携帯電話からかけるときは、携帯電話であることと電話番号を必ず伝えます。状況確認のため消防本部から折り返しの連絡が来ることがあります。電話のそばに自宅の住所と目標物を書いたメモを置いておくと、慌てずに済みます。
- やけどを負ったら、すぐに患部とその周辺を水で冷やします。着衣が燃えてやけどをした場合は、衣服を無理に脱がさず、そのまま冷やします。
ふだんの10の心得
東京消防庁は「住宅防火10の心得」として次を挙げています。
- 調理中は、こんろから離れないようにしましょう。
- 寝たばこは、絶対にやめましょう。
- ストーブの周りに、物を置かないようにしましょう。
- 家の周りを整理整頓しましょう。
- ライターやマッチを子供の手の届く場所に置かないようにしましょう。
- コンセントの掃除を心掛けましょう。
- 住宅用火災警報器を全ての居室・台所・階段に設置し、定期的な作動確認をしましょう。
- 寝具類やエプロン・カーテンなどは、防炎品にしましょう。
- 万が一に備え、消火器を設置し使い方を覚えましょう。
- ご近所同士で声をかけあい火の用心に心掛けましょう。
消防庁も「住宅防火 いのちを守る10のポイント(4つの習慣・6つの対策)」として、同じ内容をまとめています。
なお、秋の全国火災予防運動は11月9日から15日までの7日間です。消防庁は令和8年についても、11月9日(月)から15日(日)までの7日間として各都道府県に通知しています。今年度の全国統一防火標語は「火の確認 いい日を支える いい習慣」です。
この週に合わせて、警報器の作動確認と交換時期の確認をする日を決めておくと忘れません。
地震のあとの火災は、別の対策が要る
大きな地震のあとに起きる火災は、原因の内訳が平時とまったく違います。停電から復旧したときに起きる通電火災と、感震ブレーカーについては地震火災と通電火災を防ぐにまとめています。
まず今日やること
- 住宅用火災警報器の本体を見て、製造年または設置年を確かめる。10年を超えていたら交換する。
- ボタンかひもで作動確認をする。音が鳴らない、音が小さいときは電池切れか故障です。
- テレビ・冷蔵庫の裏、洗濯機まわりのコンセントのほこりを取り、使っていないプラグを抜く。