避難には3つの形がある
水害のとき、「避難所に行くしかない」と思っていると、動けないまま夜になります。国の避難情報に関するガイドライン(令和8年3月改定)は、身を守る行動を3つに分けています。
| 行動 | 内容 | とるタイミング |
|---|---|---|
| 立退き避難 | 指定緊急避難場所、安全な親戚・知人宅、ホテル・旅館などへ移動する。これが基本 | レベル3高齢者等避難、レベル4避難指示 |
| 屋内安全確保 | 条件を満たす場合に限り、自宅の浸水しない上階へ移る、または上層階にとどまる | 同上 |
| 緊急安全確保 | 逃げ遅れたときに、少しでも安全な場所へ移る次善の行動 | レベル5緊急安全確保 |
ガイドラインは、指定緊急避難場所に行くことだけが避難ではない、としています。安全な親戚・知人宅やホテルへ行くことも、条件を満たして自宅にとどまることも避難です。これを分散避難と呼びます。感染症がはやっている時期の避難先の選び方は感染症がはやっているときの避難にまとめています。
家にとどまってよい3つの条件
「2階に上がれば大丈夫」とは限りません。ガイドラインは、屋内安全確保を行うには少なくとも次の3つが満たされている必要があるとしています。判断するのは住んでいる人自身です。
- 自宅が「家屋倒壊等氾濫想定区域」に入っていないこと。 この区域は、堤防が決壊したときの激しい氾濫流や河岸侵食で、家そのものが流されたり倒れたりするおそれがある範囲です。ここにいる限り、上階に逃げても家ごと流されます。
- 浸水しない居室があること。 ハザードマップの浸水深を見て、その高さより上に部屋があるかを確かめます。
- 一定期間浸水することで生じる支障を、許容できること。 ガイドラインが挙げる支障の例は、水・食糧・薬等の確保が困難になるおそれ、電気・ガス・水道・トイレが使えなくなるおそれです。
そして重要な限定があります。屋内安全確保が成り立つのは、洪水等と高潮だけです。土砂災害と津波は、自宅が外力で倒壊するおそれがあるため、立退き避難が原則とされています。がけの近くで「2階に上がる」は、条件を満たした避難ではありません(土砂災害から逃げる)。
なお、区域に指定されていなくても、一般に河川や堤防に面した場所は災害リスクが高いとガイドラインは注意しています。
上階へ上がるのは、早い時間に
屋内安全確保も、立退き避難と同じレベル3・レベル4のタイミングで行うことが望ましいとされています。上階への移動は短時間でできますが、急に水位が上がると間に合わないためです。
ガイドラインの注意はもっと具体的です。居室が浸水すると、家具が倒れたり水圧で扉が開かなくなったりして、その部屋から身動きが取れなくなり、上階へ移動できなくなる場合がある。
そして、避難情報が出ていなくても、就寝はあらかじめ安全な上階ですべきとしています。大雨が続く夜は、寝る場所を変えてください。
自分の家について調べる4つ
ハザードマップポータルサイトでは、次のデータが重ねて見られます。
- 洪水浸水想定区域(想定最大規模・計画規模)
- 浸水継続時間(想定最大規模)— 何日水が引かないかで、備蓄の量が変わります
- 家屋倒壊等氾濫想定区域(氾濫流・河岸侵食)— 上の条件①です
- 内水(雨水出水)浸水想定区域 — 下水道からあふれる浸水。川から離れていても起きます
住所でハザード確認でも洪水の想定を地図で見られますが、そこに出るのは国・都道府県が管理する河川の想定で、内水氾濫は含まれません。市区町村のハザードマップも必ず見てください。
浸水深の目安は、国土交通省・国土地理院が次の高さを基準にしています。
| 浸水深 | 意味 |
|---|---|
| 0.5m | 一般的な家屋の1階の床の高さ |
| 3.0m | 2階の床下に相当 |
| 5.0m | 2階が水没する |
自宅の想定が3.0mなら、2階にいても床が浸かります。条件②を満たしません。
逃げる道のほうが危ないことがある
ガイドラインは、立退き避難を安全にできない状況の例を挙げています。
- 大雨・夜間の移動は視界が限られ、水路や下水道があふれていれば路面が見えにくくなるため、道路の側溝や、ふたが外れたマンホールに落下するおそれ
- 暴風による飛散物で被災するおそれ
- アンダーパス等の浸水箇所に車で侵入し、立ち往生するおそれ
だからこそ、明るいうちに、雨が強くなる前に動きます。
車で避難しない
国土交通省など5機関の注意喚起です。
- 車はわずか30cm程度の浸水でも走行不能になる場合があります。
- 吸気口やマフラーから浸水するとエンジンが停止し、再始動しなくなります。
- 水深がドアの下端にかかると、車外の水圧で内側からドアを開けることが難しくなり、ドアの高さの半分を超えるとほぼ開けられなくなります。
- 水深が床面を超えると電気装置が壊れ、自動スライドドアやパワーウィンドウが動かなくなります。
- タイヤが完全に水没すると車体が浮き、水流があれば流されます。
やむを得ず車を使う場合は、脱出用ハンマーをすぐ使える位置に置きます。ただし合わせガラス(多くの場合フロントガラス)は割れません。
アンダーパスは全国に約3,800か所あります(令和7年3月末時点)。冠水した道路には入らない、が原則です。
レベル5は「間に合わなかった」という意味
警戒レベル5緊急安全確保は、すでに安全な避難ができず、命が危険な状況を意味します。ガイドラインは、この行動をとっても身の安全を確保できるとは限らないとはっきり書いています。移動した上階まで浸水することがあるからです。
さらに、災害が発生・切迫している状況で、市町村からレベル5が発令されるとは限りません。レベル4避難指示までに避難を終えるのが前提です。
レベル5大雨特別警報が発表されたときの行動として示されているのは、むやみに移動せず、今いる場所より安全な場所へ移ること、河川・用水路・冠水した箇所に絶対に近づかないこと、特に地下施設やアンダーパス、低地は短時間で浸水する危険があり、浸水深30cm以上となる低地は要注意であることです。
警戒レベルの意味は警戒レベルにまとめています。
雨が降る前に決めておくこと
- 自宅が3つの条件を満たすかを、ハザードマップを見ながら家族で確認する。満たさないなら、行き先を決めます。
- 避難先を2か所。 指定緊急避難場所と、浸水想定区域の外にある親戚・知人宅やホテル。遠方にある場合は早めに出ます。
- とどまる場合の備え。 浸水継続時間の分だけ、水・食料・薬・簡易トイレが要ります。備蓄計算と断水とトイレの備え。
- 車の置き場所。 浸水しない高い場所の駐車場を決めておきます。水が出てから動かすのは危険です。
- 近くの川の水位を見られる場所。 国土交通省の川の防災情報で、水位の観測所、河川カメラ、雨量を見られます。住所でハザード確認の結果の下からも、その地点で開けます。雨が強くなる前に、家の近くの観測所を一度見ておきます。
書き込む用紙はわが家の避難計画シートにあります。台風が近づいた日の手順は台風・大雨の前日にやること、マンションの場合はマンションの水害対策もどうぞ。
まず今日やること
- ハザードマップポータルサイトで、自宅が家屋倒壊等氾濫想定区域に入っていないか見る。
- 自宅の浸水深を調べ、その高さより上に部屋があるか確かめる。
- 大雨が続く夜は、寝る場所を上階に変えると家族で決めておく。