熱中症で運ばれる人の4割近くは、家の中から
熱中症は、炎天下のスポーツで起きるもの、という印象があります。実際の数字は違います。
消防庁の集計では、令和7年5月から9月までに熱中症で救急搬送された人は100,510人。調査を開始した平成20年以降で最も多い人数でした。
| 発生場所(令和7年5〜9月) | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 住居 | 38,292人 | 38.1% |
| 道路 | 19,773人 | 19.7% |
| 公衆(屋外) | 12,175人 | 12.1% |
| 仕事場(道路工事現場・工場・作業所等) | 10,559人 | 10.5% |
いちばん多いのは家の中です。年齢では**高齢者(65歳以上)が57,433人で57.1%**を占めました。初診時の傷病程度では、入院が必要な中等症・重症が約36%、亡くなった人が117人です。
つまり夏の防災は、「エアコンが使える状態を保てるか」にかかっています。停電は、その前提を壊します。
夏の停電が危ない理由
台風、落雷、地震。停電の原因は季節を選びませんが、夏の停電はエアコンが止まるという一点で危険度が変わります。
- 室温は、日射と家電の熱で上がり続けます。とくにマンションの最上階や、西向きの部屋。
- 高齢者は、暑さを感じにくく、汗をかきにくく、のどの渇きも感じにくい特徴があります(消防庁)。本人が「暑くない」と言っても、室温は危険なことがあります。
- 停電が広い範囲に及ぶと、近所の店も涼しい場所ではなくなります。
停電そのものへの備え(照明・情報・充電・冷蔵庫)は停電への備えにまとめています。ここでは暑さの部分だけを扱います。
停電したら、この順番で
- 日射を止める。 すだれ、カーテン、ブラインドで直射日光を防ぎます。窓の外で遮るほうが効きます。
- 風の通り道を作る。 窓は1か所ではなく、2か所開けます。入る窓を小さく、出る窓を大きくすると流れやすくなります。
- 体を直接冷やす。 氷のうや保冷剤があれば、首、わきの下、太もものつけ根を集中的に冷やします(環境省)。濡らしたタオルと、うちわでも違います。
- 水分と塩分をとる。 大量に汗をかいているときは、塩分の入ったスポーツドリンクや経口補水液、食塩水が向きます。
- 涼しい場所へ移動する。 我慢して家にとどまるより、動くほうが安全な場合があります。
クーリングシェルター(指定暑熱避難施設)
気候変動適応法にもとづいて、市区町村が**指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)**を指定しています。公民館、図書館、商業施設などで、暑いときに誰でも涼みに入れる場所です。
環境省によると、令和8年9月4日時点で1,260市区町村が指定済みで、「暑さをしのぐ施設」を含めると1,412市区町村になります。熱中症特別警戒アラートが発表されると、指定された施設が開放されます。
停電のときは、その施設も停電している可能性があります。行き先は複数調べておいてください。お住まいの市区町村のウェブサイトか、環境省のリンク集から探せます。
暑さのアラートを知っておく
| 情報 | 発表の基準 | 単位 |
|---|---|---|
| 熱中症警戒アラート(熱中症警戒情報) | 日最高暑さ指数(WBGT)の予測値が33に達する場合 | 府県予報区等 |
| 熱中症特別警戒アラート(熱中症特別警戒情報) | 都道府県内のすべての暑さ指数情報提供地点で、翌日の日最高暑さ指数の予測値が35に達する場合等 | 都道府県 |
発表は、当日分が朝5時、翌日分が14時と17時です(地域により異なります)。
警戒アラートが出たときの行動として環境省が挙げているのは、エアコン等を適切に使用して涼しい環境で過ごす、こまめな休憩と水分・塩分補給、涼しい環境以外では原則運動しない、高齢者や子どもへの見守りと声かけです。特別警戒アラートでは、これに加えて管理者が運動・外出・イベントの中止や延期を判断します。
令和7年は、この警戒アラートの発表回数が過去最多でした(消防庁)。
電気が足りなくなるとき
停電は事故だけで起きるわけではありません。電気の需要が供給を上回りそうなときは、段階的に情報が出ます。
| 情報 | 基準 | タイミング |
|---|---|---|
| 電力需給ひっ迫準備情報 | 広域予備率が5%を下回る見通し | 前々日18時頃、一般送配電事業者から |
| 電力需給ひっ迫注意報 | あらゆる対策を踏まえても広域予備率が**5%**を下回る | 前日段階 |
| 電力需給ひっ迫警報 | あらゆる対策を踏まえても広域予備率が3%未満 | — |
警報が出て節電要請をしたあとも広域予備率が1%を下回る見通しの場合は、緊急速報メールで「計画停電実施の可能性」が配信され、電気を使う2時間ほど前に計画停電の実施が発表されます。
政府が求めている節電は「生活・経済活動に支障のない範囲で」のものです。熱中症の危険があるときにエアコンを止めることは、ここでいう節電には含まれません。照明や使っていない家電を見直してください。
熱中症を疑ったときの応急処置
環境省のマニュアルが示す手順です。
- 症状を確かめる。 めまい、失神、筋肉痛、筋肉の硬直、大量の発汗、頭痛、不快感、吐き気、嘔吐、倦怠感、虚脱感、意識障害、けいれん、手足の運動障害、高体温。
- 呼びかけに応えるか。 応えなければすぐ救急車を呼びます。到着までの間に応急処置を始めます。呼びかけへの反応が悪い場合は、無理に水を飲ませてはいけません。
- 涼しい場所へ移し、服をゆるめて体を冷やす。 氷のう等があれば、首、わきの下、太もものつけ根を集中的に冷やします。
- 自力で水分をとれるか。 とれなければ医療機関へ。
- とれるなら水分・塩分を補給します。
- 症状がよくならなければ医療機関へ。 よくなったら、そのまま安静にして十分に休息をとります。
倒れた人に付き添うときは、そのときの状況を知っている人が付き添って、発症時の様子を医療者に伝えてください。
夏の前にそろえておくもの
- 電池式または充電式の扇風機と、その電池。エアコンの代わりにはなりませんが、風があるだけで体感が変わります。
- ポータブル電源。 扇風機を何時間動かせるかで選びます。必要な大きさはポータブル電源の容量計算で出せます。ポータブル電源の選び方
- 保冷剤・氷のうを冷凍庫に。停電直後はまだ冷たく、冷やす道具になります。
- 経口補水液と、塩分の入った飲み物。備蓄計算で出した水とは別に考えます。
- 遮光のすだれやシェード。 停電してから買いには行けません。
高齢の家族が離れて暮らしている場合は、高齢者のいる家庭の備えもあわせてどうぞ。暑い日に電話をかける約束を決めておくだけでも違います。
まず今日やること
- 環境省の熱中症予防情報サイトで、熱中症警戒アラートのメール配信を申し込む。
- お住まいの市区町村のクーリングシェルターを2か所調べ、家族で共有する。
- 冷凍庫に保冷剤を入れておく。停電したときの冷やす道具になります。