管理組合が決めると、住民の行動が変わる
マンションでは、住民が個々に備えていても、建物の設備は共用部です。エレベーター、給排水管、非常用電源、防災倉庫のどれも、管理組合が決めないと動きません。順番に決めていきます。
1. 安否確認の方法を決める
大きな地震のあと、誰が無事で、誰に助けが必要かを早く知る方法を決めます。
- 玄関に掲示する方法にする。 無事な住戸が玄関のドアや郵便受けに紙やマグネットを貼り、見回る人は掲示のない住戸から声をかけます。印刷して配れるものを「無事です」カードに用意しています。
- どの規模の地震で始めるかを決める。 「震度5強以上」のように、はっきりした基準にします。
- 誰がどの範囲を回るかを決める。 階ごと・棟ごとに担当を割り当てます。
- 集約する場所を決める。 管理室前の掲示板など、結果を集める場所を1か所にします。
2. 要配慮者を把握する
エレベーターが止まると、階段を使えない人は動けなくなります。高齢の人、体の不自由な人、妊娠中の人、乳幼児のいる世帯、在宅で医療機器を使っている人を、希望者の申告に基づいて把握します。名簿は個人情報なので、保管方法と見られる人の範囲を規約や細則で決めます。用語の意味は避難行動要支援者にまとめています。
3. トイレのルールを周知する
排水管が壊れていると、流した水が下の階に逆流します。東京都下水道局も「特に集合住宅の場合は、下の階のお宅へ汚水が逆流する場合があります」としています。点検が終わるまで水洗トイレを流さないことを、掲示と回覧で全戸に知らせます。1戸でも流すと被害が出ます。詳しくはマンションのトイレと排水にまとめています。
4. 防災備蓄をそろえる
- 共用の備蓄は「全戸分の食料」ではなく、共同で使うものを中心にします。簡易トイレ、発電機やポータブル電源、投光器、担架、工具、ヘルメット、カセットコンロ、リヤカーなど。
- 置き場所を分散する。 1階の倉庫だけだと、浸水や倒壊物でたどり着けないことがあります。中間階の空きスペースにも分けます。
- エレベーターの中に防災キャビネットを置く。 閉じ込められたときの水・簡易トイレ・ライトが入ります。
- 各戸の備蓄は7日分を目安に呼びかける。 量は備蓄計算で出せます。
5. 訓練をする
- 安否確認の掲示を実際にやってみる。 全戸に紙を配り、決めた日に貼ってもらい、担当が回って集計します。
- 階段で水を運ぶ体験をする。 高層階の負担が実感できます。
- 防災倉庫を開ける。 鍵の場所と中身を、理事が交代しても引き継げるようにします。
- 教材を使う。 訓練で使う教材に、大画面スライドと印刷シートがあります。
6. 計画として残す
災害対策基本法には、住民や事業者が自主的に作る地区防災計画の制度があります。国土交通省のモデル事例(Eマンション地区防災計画)では、管理組合の自主防災会が、建物と地域のリスク、活動基準と組織体制、地震・水害それぞれの対応をまとめています。作った計画は、市区町村の防災会議に提案して、市区町村の地域防災計画に位置づけてもらうこともできます。
東京都の「マンション防災ガイドブック」は、在宅避難の備え、対策の開始、活動の検討(組織・訓練・安否確認)、設備(エレベーター・給排水・電気・要配慮者)、地域協力、様式集の6章立てです。ゼロから作るより、こうした様式を使うほうが早く進みます。
7. 制度と補助を使う
東京都は、耐震性があり、防災マニュアルの策定と防災訓練の実施、または安否確認方法の構築(ソフト対策)か、停電時に水の供給とエレベーターの運転ができる電力供給設備(ハード対策)のあるマンションを「東京とどまるマンション」として登録・公開しています。登録したマンションには、防災備蓄資機材、非常用電源・太陽光発電・V2X設備、エレベーターの閉じ込め防止機能、浸水対策設備への補助があります。
東京都以外でも、耐震診断・改修や感震ブレーカーの補助がある市区町村があります。防災の補助制度で、お住まいの市区町村を確かめられます。
書き込みながら決められるマンション防災シート(A4 1枚)を用意しています。理事会や防災訓練で配って使えます。
まず今日やること
- 管理組合に防災マニュアルがあるか確かめ、なければ理事会の議題にする。
- 安否確認の方法(掲示の仕方と基準の震度)を決める。
- 次の総会・防災訓練の日程に、安否確認の練習を入れる。