防災用品は、しまい込まれる
防災用品を買ったのに、押し入れの奥から出してみたら期限が切れていた。乾電池が液漏れしていた。どこにしまったか思い出せない。よくある話です。
理由ははっきりしています。ふだん使わないものは、ふだん目に入らないからです。目に入らないものは点検されず、点検されないものはいざというときに使えません。
フェーズフリーは、ここを逆から考えます。ふだん使っているものが災害のときにも役立つなら、買い足す必要も、しまい込む必要もありません。使っているうちに古いものから減り、自然に入れ替わります。
民間から始まり、国が後を追っている
フェーズフリーは、一般社団法人フェーズフリー協会が提唱した言葉です。同協会は「身のまわりにあるモノやサービスを、日常時はもちろん、非常時にも役立つようにデザイン」する考え方だとしています。
その後、公的機関が取り入れ始めました。内閣府は「フェーズフリー等促進検討会」を設け、災害への備えを特別なものとして捉えるのではなく、日常の延長として実践される社会を目指す検討を進めています。
自治体も動いています。徳島県鳴門市は地域防災計画にこの考え方を取り入れました。東京都多摩市は市民向けに、身の回りのものを次の4点で見直すようすすめています。
- 耐久性があるか
- 停電しても使えるか
- 断水しても使えるか
- ガスが止まっても使えるか
この4つで家の中を見回すと、すでに持っているもので足りる部分が見つかります。
ふだん使えるもの
使いながら入れ替えられるものです。買い足すのではなく、いま持っているものを少し多めにするだけで備えになります。
| もの | ふだんの使い道 | 備えとしての役目 |
|---|---|---|
| カセットコンロとボンベ | 鍋料理、卓上の調理 | ガスが止まっても煮炊きできる |
| ふだんの食品 | 毎日の食事 | ローリングストックで期限切れが起きない |
| ポータブル電源 | 車中泊、キャンプ、屋外作業 | 停電しても充電と小さな家電が使える |
| クーラーボックス | 買い物、行楽 | 停電のとき、冷蔵庫の中身を一時的に保てる |
| 使い捨ての紙皿・ラップ | ふだんは使わなくてよい | 断水のとき、食器を洗わずに済む |
ポータブル電源には、もうひとつ理由があります。リチウムイオン電池は置きっぱなしにすると劣化するため、ふだん使うこと自体が点検と寿命対策になります。
置き換えられないものが、はっきりある
ここが大事なところです。「備えない防災」という言い方が広まっていますが、備蓄をしなくてよいという意味ではありません。
ふだん使いで置き換えられないものが2つあります。
水です。1人1日3リットル、4人家族の7日分なら84リットルになります。2リットルのボトルで42本です。ふだん飲む量を多めにする形である程度は回せますが、この量をすべて日常で回すのは現実的ではありません。飲料水と保存容器の選び方で、どこまで回せてどこから買い置きが要るかを説明しています。
簡易トイレです。そもそもふだん使いません。断水すると水洗トイレは使えず、1人1日5回として4人家族の7日分で140回分が必要になります。これは買って置いておくしかありません。簡易トイレの選び方を参照してください。
この2つは、ふだん目に入らないぶん、期限を控えておかないと気づけません。簡易トイレの凝固剤にも期限があります。
付けたままで働くもの
3つ目の種類があります。使うのでも、しまっておくのでもなく、付けておくものです。
一度付ければ日常の手間はありませんが、交換の時期だけは覚えておく必要があります。
家の中を見回してみる
新しく買う前に、いま家にあるものを数えてみてください。
- カセットコンロとボンベは何本あるか
- モバイルバッテリーは充電されているか
- 水は何リットルあるか。ふだん飲む分を含めて
- 懐中電灯やランタンは、電池を入れたまま液漏れしていないか
- クーラーボックス、寝袋、キャンプ用品はどこにあるか
足りない分だけを買えば十分です。必要な量はわが家の備蓄計算で出せます。